トライバルラグ産地5【シャーサバン】

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◾️概説

シャーサバンはイラン北西部、アルメニア共和国及びアゼルバイジャン共和国との国境付近に暮らす遊牧系部族連合です。

彼らはアゼルバイジャン語を話し、遊牧生活を営む一部の人々は、アゼルバイジャンのモガン平原の冬の宿営地(キシュラク)と、サバラン山の南から約150マイル周辺の夏の宿営地(ヤイラク)の間を移動します。

◾️歴史

シャーサバンの起源については明らかではありませんが、クルドなどから派生したと考えられる一部の支族を除けば、11世紀に西南アジアを席巻したトルコ系民族、オグズに由来するものと考えられています。

シャーサバンの名は「シャー(皇帝)に忠誠を誓う者たち」を意味すると言われ、1815年に英国のジョン・マルコルム卿が著した『ペルシャの歴史』によると、サファヴィー朝第5代君主であったアッバス1世(在位1587〜1629年)が、イラン西部の開拓を妨げるキジルバシュに対抗させるため、アゼルバイジャン北東部の部族民を集めて結成。

シャーサバンはイスラム教シーア派に改宗してシャーに忠誠を誓い、サファヴィー朝の軍事力を担う見返りとして、北東アゼルバイジャンにおける遊牧生活を認めたとされます。

また『シャーサバン』を著したウラジミール・ミノルスキーは、モガン国境警備隊長I・A・オグラノビッチとタブリーズ総領事E・クレーベルの記録から、シャーサバンは朝廷の傭兵としてアナトリア出身のユンシュル・パシャのもとに組織され、パシャの一族が総長(エルベイ、イルベギ)を世襲。

総長一族が他の構成部族を支配し、17世紀半ばにシャーサバンと名付けられたとしています。

他には16〜17世紀にキジルバシュに属する32の部族が、対等の地位のもとに連合したとする説があります。

モガン平原

1722年にサファヴィ朝が滅亡すると、イラン北西部にはオスマン・トルコとロシアとが侵攻し、とりわけ要衝であったモハンとアルデビルは3つの帝国の争奪の場となりました。

このときシャーサバンはオスマン軍に抵抗します。

1728年秋にメシキンにてシャカーキが、1729年初頭にはイナンルとアフシャルがオスマン軍に降伏しますが、シャーサバンとモガンルは太守アリーゴリー・ハーン・シャーサバンの指揮のもと奮戦し、クラ川を渡りサルヤンまで進出しました。

1732年にアフシャル朝を興したナーディル・シャーがこの地域を奪還したとき、シャーサバンとモガンルはイランの主権下に復帰。

オスマン帝国の配下となっていたシャカーキ、イナンルとアフシャルは、ナーデルの故郷であるホラサンに追放されます。

ナーディル・シャーは、モガン平原とアルデビル周辺に残った部族を、ナーディルの東征に従ったバドル・ハーン・シャーサバンのもとに結集させ、シャーサバン部族連合を組織したと言います。

ナーディルの死後、バドル・ハーンの息子(兄弟との説もあり)ナシャール・アリー・ハーン・シャーサバンが総長の座に就きますが、相次ぐ抗争やロシアの侵攻の中、アルデビルを拠点とする勢力とメシキンを拠点する勢力との二つの集団に分裂しました。

1796年、カジャール部族連合のアガー・モハンマド・ハーンがカジャール朝を興しますが、二度にわたるロシアとの戦争に敗れ、コーカサス地方をロシアに割譲します。

1828年に締結されたトルコマンチャーイ条約により、シャーサバンは冬の宿営地の大半を失い、南方への移動を余儀なくされました。

第一次ロシア・ペルシャ戦争(1804~1813年)

 

 

◾️人口

シャーサバンの人口は10万人から12万人(15,000〜18,000世帯)と推定されます。

1970年代初頭には、4万人がモガンとサバラン山の間を移動生活を送っていました。



◾️形態

シャーサバンは、イランの他の部族連合とは異な​​り、総長(イルハン)が配下の部族を統率するのではなく、 複数の有力部族の族長(ハーン)が外部や中央との仲介者となります。

◾️絨毯

モガン平原とアルデビル周辺に居住するシャーサバンが製作しているのは、もっぱら平織のキリムやソマックと呼ばれる綴れ織りの敷物・バッグ類で、パイル織絨毯は製作していません。

 

シャーサバン産のキリムとソマック

パイル織絨毯を製作しているのは、タブリーズ南方のハシュトルード地方やクムに近いサーベ近郊に定住したシャーサバンで、コーカサス絨毯に似た幾何学文様のメダリオンを連続させたデザインが多く見られます。

 

ハシュトルード地方のシャーサバン絨毯

これらの地域に暮らすシャーサヴァンが製作する絨毯には隣接するクルドの影響を受けた作品もありますが、クルド絨毯に比べると柔らかい構造が特徴です。

サーベ近郊で製作されたシャーサバン絨毯

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