宮廷工房1|ペルシャ絨毯専門店フルーリア東京

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サファヴィー朝期のペルシャでは宮廷の保護のもと各地に工房が開設され、ペルシャ絨毯は黄金期を迎えました。

とりわけ第2代君主タハマスプ世と第5代君主アッバス世の治世下において名だたる逸品が誕生しています。

タハマスプ1世(1514~1576年)

タハマスプ1世(在位:1524~1576年)の時代に製作されたものとしては、前述した狩猟文様絨毯やアルデビル絨毯のほか「チェルシー絨毯」や「戴冠式絨毯」「ポルトガル絨毯」がその代表格。

チェルシー絨毯はそのデザインがティムール朝期の細密画に描かれた総文様の絨毯に似ていることから、メダリオンのある狩猟文様絨毯やアルデビル絨毯より古いとする説があり、また産地についてもイラン北部か中部かで意見が分かれています。

チェルシー絨毯(ビクトリア・アンド・アルバート美術館蔵)

アルデビル絨毯を上回る72万ノットの緻密な織りを持つこの絨毯の名は、1877年にロンドン南西にあるチェルシー街の美術商からサウス・ケンジントン美術館(現ビクトリア・アンド・アルバート美術館)がこれを購入したことに由来するもの。

メダリオン・オール・オーバーのデザインが特徴的なこの絨毯は2005年に来日し、東京都の世田谷美術館で開催された『宮殿とモスクの至宝展』にお目見えしました。

同上(部分)

戴冠式絨毯は1902年8月9日、ウェストミンスター寺院で行われたエドワード7世英国王の戴冠式の際、玉座の前に敷かれたものです。

エドウィン・オースティン修道院の絵画にも描かれたこの絨毯は、縦701センチメートル、横366センチメートル。

フィールドには流れる水を表す青いカルトゥーシュと花々で満ちた樹木や糸杉、中国から伝わった龍、鳳凰、麒麟が織り出されており、その様から「パラダイス・ガーデン・カーペット」とも呼ばれます。

戴冠式絨毯(ロサンゼルス郡立美術館蔵)

戴冠式の際、絨毯は米国の資産家マースデン・ペリーが所有していました。

その後、幾人かの元を経て、石油王のジャン・ポール・ゲティの手に渡ります。

エドワード7世戴冠式図(エドウィン・オースティン修道院蔵)

ゲティは世界的な美術収集家として知られる一方「類まれなるケチ」としても有名で、のちに孫のジョン・ポール・ゲティ3世が誘拐された際には身代金を値切りつつ、美術品に惜しみなく金を使っていたと伝えられるほど。

そんなゲティでしたが英国に移住した翌年の1949年、戴冠式絨毯を前述したアルデビル絨毯とともにロサンゼルス郡立美術館に寄贈したのでした。

戴冠式絨毯はアルデビル絨毯同様ペアで製作されたもので、もう一枚はドイツのベルリン美術館に収蔵されています。

戴冠式絨毯(部分)

ポルトガル絨毯はコーナーに名の由来となったポルトガル船とポルトガル人が織り出された一連の作品。

他に類を見ないこのユニークな絨毯は、インドで製作されたとする説もあるものの、イラン北東部のホラサン地方で製作されたとするのが定説となっています。

 

ポルトガル絨毯

旧約聖書文書の一つである『ヨナ書』には、次のような記述があります。

ニネベに行って預言を伝えるよう神に命じられたヘブライ人のヨナ(イオナ、ジョナス、ユーノスとも)は、イスラエルの敵国アッシリアに行くことをためらい、地中海の彼方にあるタルシシュに向かう船に乗り込みました。

船は神が起こした嵐に巻き込まれて立ち往生。

ヨナは「私を海に投げ込めば嵐は収まる」と告げ、船員たちは彼の言葉に従います。

海中で神が遣わした大魚に飲み込まれたヨナは三日三晩を大魚の腹中で過ごし、脱出した後、ニネベに赴き「40日後にニネベが滅ぶ」との預言を伝えたのでした。

中世の写本に描かれたヨナ

また1537年、西インドのグジャラート王国のバハードル・シャー(在位:1526〜1537年)が溺死するという事件が起こります。

ムガール朝に抗するためポルトガルの加護を期待したバハードル・シャーは、自国領ディウにポルトガルが要塞を造ることを許可。

しかし、ポルトガルはグジャラートから退去したため、要塞の取り壊しを願うべくバハードル・シャーはポルトガル船へと出向きますが、陸に向かう途中、海に落ちて溺れ死んでしまいました。

バハードル・シャーの最後を描いた細密画

実はバハードル・シャーは殺害されたのですが、ポルトガル絨毯に描かれているのはこの事件もしくは前述したヨナの伝説ではないかと考えられています。

また、陸と海からなる地球の縮図をフィールド上に表現したものではないかとする説もありますが、ポルトガル本国あるいはポルトガル領インドに向けて製作されたものであることは間違いなさそうです。

ポルトガル絨毯(部分、オーストリア工芸美術館蔵)

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