2018/09/07
1月14日に放映されたテレビ東京の某番組で「1億円オーバーの絨毯」なるものが紹介されていました。
パルデ・サイズのクム・シルクのようでしたが、クム・シルクであれば最高級といわれる121万ノットの作品であっても、適正価格は500万円ほどです。
白鶴美術館や遠山記念館、徳川美術館などの収蔵品をも含めて、現在わが国にあるペルシャ絨毯の中でサザビーズなりクリスティーズなりの一流オークションで1億円以上の値がつくのは、おそらくミホ・ミュージアムが所有する「サングスコ絨毯」だけでしょう。
このサングスコ絨毯は16世紀末にサファヴィー朝下のケルマンで製作されたとされる作品で、サイズは約6m×約3m。
ポーランドの旧貴族が長年メトロポリタン・ミュージアムに寄託していましたが、バブル期に宗教法人の神慈秀明会が譲り受け、同会が建設したミホ・ミュージアムに収蔵したものです。
海外をも含め、過去に1億円以上で取引されたペルシャ絨毯のほとんどがサファヴィー朝期の作品。
湾岸諸国の王族らの注文によりイラン絨毯公社が製作したモスクの床一面を覆うほど巨大な絨毯は別にして、現代物のペルシャ絨毯で1億円を超えるものなど存在しません。
自身で1億円以上の価値があると信じるのは勝手ですが、ものには「相場」というものがあります。
社会に不信感を与えるような軽はずみな発言で、絨毯業界全体の評判を失墜させることは厳に慎んでいただきたい。
相場の20倍を超えるような値段を吹聴したところで人間としての品性を疑われるだけ。
笑われてお終いです。