セイエド・アボロファテフ・ラッサム・アラブザデの作品|ペルシャ絨毯専門店フルーリア東京

セイエド・アボロファテフ・ラッサム・アラブザデの作品

ラッサム・アラブザデ記念館が所蔵するアラブザデの最高傑作の一つ。
かつての宮廷における風景を写本の挿絵風に描いた作品ですが、ペルシャ細密画の技法とは異なり、一点透視図法を用いることによって風景をよりリアルに表現しています。
一点透視図法はパースの一つで、消失点を一つ決め、すべてのものがそこへ収束するように描く透視図法です。
本作はアラブザデの作品としては大人しめの印象を受けますが、古典と現代的デザインとを融合させる彼ならではのテクニックはここでも如何なく発揮されているといえるでしょう。
上端左端に「ラッサム・アラブザデ」の銘が織り込まれています。

セイエド・アボロファテフ・ラッサム・アラブザデの作品

本作もラッサム・アラブザデ記念館が所蔵する作品で、アラブザデが得意とした風刺画を織り出した一枚。
人々が身に着けた衣服は古い時代のそれですが、本作は「白色革命」がもたらした貧富の差の拡大を痛烈に批判したものです。
白色革命はモハンマド・レザー・シャーが1963年に始めた近代化政策で、膨大なオイル・マネーを背景に農地改革や工業化を強引に推し進めました。
しかし、インフレによる物価の高騰や石油利権に絡む政治の腐敗を招くことになり、上流中産階級と下層階級との対立を生むに至りました。
そうした対立は神に救いを求めモスクに押し寄せる人々と、酒池肉林に興ずる者たちをもってここに描かれています。
アシンメトリーな枠のとり方や人物の描写はペルシャ細密画の伝統を踏襲したものですが、モスクの尖塔は自然な陰影を用いることによって三次元的に表現されており、本作においても古典と現代デザインとの融合が見てとれます。
青い尖塔を印象付けるため、他の部分を控えめなトーンで統一したカラーリングの上手さも特筆すべきでしょう。

セイエド・アボロファテフ・ラッサム・アラブザデの作品

上の作品に同じく風刺画を織り出した一枚。
白色革命が招いたインフレは庶民生活を困窮させ、多くの失業者を生み出すことになりました。
一方で、第一次オイル・ショックによる原油価格の高騰は帝室や政府を取り巻く者たちに莫大な富をもたらし、経済格差が拡大。
市民の不満はそれらへと向けられ、やがてイラン革命へと発展します。
本作では生活に苦悩する男性の姿が王侯貴族の狩りの犠牲となる動物に例えて描かれており、政権への痛烈な批判を込めたものとなっています。
サイケデリック調の背景、線画による人物の描写、別の絨毯の一部が重なっているように見せる表現など、本作はアラブザデ独特のテクニックが集約された作品に仕上がっているといえるでしょう。
ラッサム・アラブザデ記念館蔵。

セイエド・アボロファテフ・ラッサム・アラブザデの作品

絨毯の一部を拡大したデザインはアラブザデの作品によく見られるものですが、本作ではメダリオンとペンダントに絡ませるようにガードを畝らせ、それを境として他の部分とは異質なサイケデリックな文様が配されています。
ややもすると煩雑になってしまうこうしたデザインを、絶妙なバランスをもって違和感なく纏めあげるセンスこそが彼の名を世に知らしめる源になったことは間違いないでしょう。
ラッサム・アラブザデ記念館蔵。

【セイエド・アボロファテフ・ラッサム・アラブザデの解説】を見る

 

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