よい絨毯の選び方

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ペルシャ絨毯とは

ペルシャ絨毯とは

ペルシャ絨毯とは「イラン国内で製作された手織絨毯」を言います。
したがって、トルコ、コーカサス、アフガニスタン、ウズベキスタン、ブルガリア、ルーマニア、エジプト、パキスタン、インドや中国など、イラン以外の国で製作された絨毯は、手織でデザインが似ていてもペルシャ絨毯ではありません。

またイラン国内で製作されたものであっても、機械を用いて製作された絨毯はペルシャ絨毯とは言いません。
当然「ペルシャ絨毯機械織」「ペルシャン・カーペット マシン・メイド」などは存在しない訳です。
こうした表記を行う業者あるいはセミプロの中には、品質表示ラベルにman silk 100%とあるのを「シルク100%」として販売している者もいますが、man silkは化学繊維のレーヨンのことで、シルク=絹ではありませんのでご注意ください。

ペルシャ絨毯が多くの人を魅了するのは伝統に裏打ちされた手工芸品だから。
栄華と悲哀とに満ちた長い歴史の中で、延々と育くまれた技術なり文様なりに人々は浪漫を感じるからです。
トルコ絨毯やコーカサス絨毯、アフガン絨毯をはじめとする中央アジアの絨毯などについても、わが国で人気があるかどうかは別として欧米には多くのコレクターがおり、十分にその価値を認められていると言えるでしょう。

しかし、ペルシャ絨毯をそっくりそのままコピーして製作された一部のインド絨毯や中国絨毯は、いくら高値で販売されていたとしても単なる「実用品」に過ぎません。
なぜなら、そうした安易なコピー品には人々が求める「伝統」という二文字が欠如しているからです。
ハリウッド・スターのコスプレをしてみたところで、スターにはなれません。
あなたはコスプレしただけのただの人のサインを、ありがたがって飾りますか?

ウールかシルクか

ウールかシルクか

ペルシャ絨毯はウール絨毯とシルク絨毯に大別されますが、シルク絨毯が高級品でウール絨毯は低級品などということはありません。ウール、シルクともによさがあり、使用する場所により向き不向きがあるということを知っておく必要があるでしょう。

優れた光沢が魅力のシルク絨毯は水回りやダイニングセットの下など、濡れたり椅子を頻繁に出し入れするような場所には向きません。
「欧米では土足で使っている」などと説明する絨毯業者がいますが、それは一般的に耐久性に優れたウール絨毯に言えることであって、摩擦に弱いシルク絨毯についてはその限りではありません。

また、シルク絨毯は水に濡れた箇所が硬化しやすく、その部分だけ色が違って見えることがよくあります。
またウールに比べると染料の定着が悪いため、色が滲みやすいという欠点もあります。
シルク絨毯を長持ちさせるには摩擦や水濡れに注意しながら使う必要があることを知っておくべきでしょう。

ランクについて

ランクについて

わが国で俗に「五大産地」とよばれる産地の絨毯には、それに似せてイラン国内の別の町で製作されたコピー品が多数存在しています。
その一覧を以下に記しておきましょう。

クム産(シルク):
ザンジャン産、マラゲ産(ボナム産を含む)
クム産(ウール):
シャーレザー産
カシャーン産(シルク):
ザンジャン産、マラゲ産
カシャーン産(ウール):
アルダカン産、ヤズド産、カシュマール産(1970・80年代の品)
ナイン産:
タバス産、カシュマール産
イスファハン産:
ナジャファバド産(1970年代以前の品)
タブリーズ産:
ホイ産(マヒ)、カシュマール産(ナグシェ)

これらは実際に製作された町の名ではなく、有名産地の名を冠して販売されるケースが大半ですが、本物の有名産地の作品に比べると当然品質は劣ります。
コピー品とはいえイラン国内で製作された手織絨毯ですから、ペルシャ絨毯であることには違いありません。
予算的な制約からコピー品であることを承知で購入する人がいるのも事実ですので、それはそれで存在意義があるのでしょう。

問題なのは、そうした品質の劣るコピー品に「クム ◯◯」「ナイン ◯◯」のような有名産地の工房のサインを付け加え、それがあたかも当該工房で製作された高級品であるかの如く偽って販売する行為です。
いまや日本国内の多く絨毯業者がこうした問題ある商売を当たり前のこととして行うようになりました。
長期にわたるデフレとイランの経済成長に伴う仕入価格の上昇により高額品が売れにくくなったいま、本物を安く売るよりコピー品を高く売る方がより多くの利益を得ることができるからです。
「有名産地の名を語らなければ売れない」と言うのなら、売れるように努力するか取扱いを止めるかするのが筋のはず。
詐欺紛いの商売を正当化する理由にはなりません。

高価な品が必ずしも高級であるとは言えない現実がペルシャ絨毯にはあります。
高い買物をしないよう、有名産地の名が付いた絨毯には本物とコピー品という明確なランクがあることを知っておく必要があるでしょう。

サインについて

サインについて

「作者のサインが入った高級品です」などと説明する絨毯業者が多いのですが、必ずしもそうであるとは限りません。そもそもサインなど後からでも簡単に付け加えられる訳で、ブランドに弱い日本人の性質は、とうの昔にイラン人たちに見透かされています。

前述したように、日本に向けて輸出される無銘のクム・シルクやナイン産、あるいはクム・シルクやカシャーン・シルクのコピー品であるザンジャン・シルクやマラゲ産には、有名工房作品の偽サインが付け加えられるのがいまや当たり前にさえなってきました。
偽ブランド品には厳しい態度で臨むようになった日本の警察もペルシャ絨毯にまでは手が回らない(と言うよりも対処するつもりがない?)ようで、野放し状態となっているのが現状です。

「そんなに簡単に偽サインが入れられるものか?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
ところが偽サインを入れるのは思いのほか簡単。
傷んだパイルを結び直すことができるのがペルシャ絨毯のよさのひとつですが、この技術を悪用する訳です。
イランでは知的財産権に関わる意識が低いことから、多くの修理職人は罪の意識など抱かず、安い料金で引き受けているのが現実。

サインに惑わされることなく自分が本当に気に入った一枚を選ぶことが、のちのち後悔しないための最善策です。

ペルシャ絨毯の値段について

ペルシャ絨毯の値段について

「ペルシャ絨毯の値段のつけ方はどうなっているのかわからない」という声をよく聞きます。
「店によって値段がまったく違う。ひと桁違うなんてこともある」「いきなり半額になったりする。いったい、いくらで仕入れているのか?」……こうした内容なのですが、消費者が抱くペルシャ絨毯の値段についての疑問は、まさに日本の絨毯業界の問題点を指摘したものといえるでしょう。

ペルシャ絨毯の販売サイトを見るとやたらと値引を売りにした店ばかりが目につきます。
中には70%OFFとか80%OFFとかいったところまであります。
こうした業者に限って「ペルシャ絨毯は一生もの」であるとか「古くなればなるほど価値が出る」などと美辞麗句を並べ立てているようですが、一生ものになり得る品や古くなればなるほど価値が出る品を、なぜ法外な値引きをして叩き売らなければならないのでしょうか?
言っていることとやっていることが矛盾しているように思います。

そもそも値引しなければ売れないというのは「商品が悪いか、値段が高すぎるか、販売員に能力がないか」のいずれかです。
逆に言えば値引をウリにしているのは、それしか取柄がないということ。
つまり、商品や値段、知識に自信がないから値引をアピールしているとしか考えられません。
これは「うちは三流店です」と宣伝しているようなものでしょう。
適正価格をもって販売しているならば、極端な値引などできないはず。
まともな商売をしていて、どうしたら70%や80%も値引できるのか理解に苦しみます。

人種差別をするつもりは毛頭ないので誤解しないでほしいのですが、もともと「定価」というものが存在しないイランでは交渉によって値段が決まります。
その商習慣は現在も残っていて、一部の商品やサービスを除くと値段交渉が必要になるのが一般的。
高い値段で売ることは販売する者の「交渉力の高さ」を証明することに他ならず、むしろ誇るべき行為である訳です。彼らにとっては当然のことかもしれませんが「郷に入れば郷に従え」といいます。
そうした商習慣のない日本で自国流のやり方を押し通すことは、やはり問題でしょう。

しかし、彼ら以上に問題なのが日本人業者たち。
本来、そうした場違い的なやり方に注意を促すべき日本人業者たちが一緒になって同じことをやっています。
結果、信用が第一の百貨店においても「絨毯だけは大幅値引も可」などというダブル・スタンダードを生んでしまいました。
ペルシャ絨毯に対して多くの日本人が持つ認識は「値段があってないようなもの」。
そして、絨毯商に対して抱くイメージは「騙される」「胡散臭い」です。
情報優位を悪用し、法外に設定した定価から大幅値引きをして購買意欲を煽る……このような商売を続けていれば、絨毯業界の信用はなくなってしまのが当たり前。
その場限りの商売は、自ら自分の首を絞める行為に他なりません。

「架空のメーカー希望小売価格」「根拠のない市価」を用いて商品を安く見せかけるのは消費者庁が警告する不当行為の典型です。
うまい話には裏があることをお忘れなく!

直輸入だから安い?

直輸入だから安い?

「直輸入だから安い」を金科玉条の如くに掲げる絨毯業者は多いのですが、そうであるとは限りません。
直輸入していても高いところは高いし、国内仕入でも安いところは安いです。

たとえ安く仕入たとしても利益を大幅に上乗せすれば売価は高くなるのは当たり前。
つまり、直輸入だから安いとは限りません。
こんなことは子どもでも理解できるでことです。
そもそも直輸入かどうかなど入荷作業を見なければわかりません。

実際、直輸入していないにも関わらず直輸入を掲げている店はいくつもあります。
証拠となる入荷作業中の画像を公開していないような店は口先だけの可能性がありますので注意しましょう。

品質を見極めるには裏を見ればよい?

品質を見極めるには裏を見ればよい?

もちろん間違いではないのですが、絨毯の価値を決めるのは織の密度だけではありません。
よく「裏を見て結び目の数を数えればよい」と言われますが、ノット数はあくまでも要素のひとつにすぎず、他にもデザインや染料の種類、歪みの有無や希少性他、多くの要素を加えた上で絨毯の価値は決まるのです。

ノットにしても「ジュフティ」とよばれる、ごまかしのテクニックを用いて製作された絨毯のノット数は見た目のノット数の半分になり、品質および耐久性は大きく落ちます。
ジュフティには様々な方法があり、多くの場合、感触で見分けるしかありません。
外見だけで判別するのは素人にはまず無理でしょう。

またタフト・バフト(シングル・ノット)の絨毯の結び目をそのまま数えて「100万ノットあるからこんなに薄い」などと説明する者がいるので要注意。
タフト・バフトの場合、縦糸は重なりませんから絨毯は薄くなり、実際のノット数は目に見える数の半分になります。

その他、修理痕や縦糸・横糸の掛け忘れ、デザイン構成に影響するほどの結び違い、極端な歪みなども評価に影響するので注意が必要。付け焼刃的知識はかえって命取りになることがあります。

アンティーク・オールドについて

アンティーク・オールドについて

同業の者として恥ずかしい限りですが、絨毯業者の中には情報優位を悪用し、情報弱者である一般消費者を手玉に取ろうと企む不心得者がいるのが現実。
傷みがあったりパイルが擦り切れたりしていて売物にならない中古の絨毯を「アンティーク」「オールド」と称し、あたかも価値があるかの如くの説明を加えて販売している者がいるのです。

こうした不心得者は店舗を持たずネットオークションなどを通じて商売している無店舗業者に多いようで、ネットオークションには「アンティーク」と記された絨毯がたくさん出品されているのですが、それらの中に本物のアンティークはまずありません。
コンディションのよい本物のアンティーク絨毯は希少だからこそ、サザビーズやクリスティーズなどの一流オークション・ハウスでも高値で取引されているのです。

冷静に考えればわかるはずですが、本当に価値のあるアンティーク絨毯が機械織の絨毯と同じような値段で買える訳がありません。
「安物買いの銭失い」にならぬよう、冷静に思慮していただければと思います。

アンティーク・オールドになりえるペルシャ絨毯とは?

アンティーク・オールドになりえるペルシャ絨毯とは?

需要と供給により成り立っているのが市場です。
絨毯に限らずモノの価値というのは、この重要と供給のバランスによって決まることは言うまでもないでしょう。

世界にはアンティーク・オールド絨毯の愛好家や収集家がたくさんいます。
しかし、すべてのペルシャ絨毯やトライバルラグが、やがて彼らの購買対象となり得る訳ではありません。
新しいものにはない魅力がプラスされてこそ、古い絨毯はアンティーク・オールドとしての価値を認められるのです。

それは製作された時代を反映したデザインであったり、年月により醸し出された色調であったりするのですが、不可欠なのは「作り手が込めた思い」を感じさせるものであること。
たとえ手織であってもコマーシャル・ベースに乗せて機械的に生産された絨毯が、愛好家や収集家の需要を満たすことはありません。
需要がない品に価値など認められるはずがないのです。

おすすめの書籍

わが国で出版されたペルシャ絨毯関連の書籍のうち、おすすめしたいのは以下の3冊です。

ペルシア絨毯図鑑

ペルシア絨毯図鑑
編者:手織絨毯協会
出版社:アートダイジェスト
出版年:1986年
ISBN:4900455024
アンティーク・オールドを中心にペルシャ絨毯の名品91点をカラー写真と詳細な説明文で紹介しています。
エイミ岡田氏による「絨毯ジャパネスク」と題したインテリアコーディネート例、国立民族学博物館名誉教授の杉村棟氏によるシルクロードの手織絨毯の概説。その他、ペルシャ絨毯の基礎知識から地名/部族名、デザイン、絨毯の古典、技術、イスラムの王朝、人物名/その他についての解説もあり、入門編として最適な一冊。
すでに絶版となっていますが、中古本ならAmazonなどで入手可能(2018年9月現在)ですので、入手可能なうちにご一読をおすすめします。

ペルシャ絨毯文様事典

ペルシャ絨毯文様事典
編著者:三杉隆敏・佐々木聖
出版社:柏書房
出版年:1998年
ISBN:4760116516
アンティーク・オールドのペルシャ絨毯の名品155点を詳細なカラー写真で紹介した豪華な一冊です。
作品はメダリオン・コーナー・タイプ、メダリオン・タイプ、オーバーオール・タイプ、メヘラブ・タイプ、ピクチュアー・タイプの5つに分類されており、特徴的な箇所については拡大写真を掲載。
とても見やすく構成されています。
巻末にはペルシャ絨毯の文様や文化についての記述もあり。
著者は陶磁器学者の三杉隆敏氏と現(株)光和代表取締役の佐々木聖氏で、1990年にハードカバー版が、1998年にソフトカバー版が出版されました。
すでに絶版となっていますがAmazonなどで中古本の入手が可能です(2018年9月現在)。

カーペットストーリー・ペルシア編

カーペットストーリー・ペルシア編
著者:エッシー・サカイ(横張和子訳)
出版社:千毯館
出版年:1993年
ISBN:4915790169
英書『The Story of Carpets』の和訳本です。
アンティーク・オールド絨毯を中心に157点のペルシャ絨毯(ペルシャ以外の絨毯も一部あり)をオールカラーで紹介。
「はじめに」「遥かな僻の地において」「秘密を解き明かす」「模様を読む」「絨毯を演出する」「真実を語る」「語られざる富」「地域別」の8部構成です。
本書もすでに絶版になっているようですがAmazonなどで入手可能(2018年9月現在)。

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