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ウールとシルクの長所・短所を教えてください

ウールの長所は、まず保温性に優れていること。
繊維が空気を閉じ込めるため熱が逃げにくく、冬は暖かく過ごせます。
次に吸湿性に優れていること。
空気中の水分を吸収し、水分が蒸発する時に気化熱を奪うので夏は涼しく感じます。また、静電気を起こしにくく埃が付きにくいのに上、燃えにくいとも言われます。
更に汚れにくいこと。
繊維の表面は人間の髪の毛と同じ「エピキューティクル」という撥水性の高い薄い膜で覆われているため、水溶性物質を表面で弾きます。

ウールとシルクの長所・短所を教えてください
年間を通じて使用できるウール絨毯(夏期のイスファハンにて)

加えて染色性に優れていること。
ウールは高温でないと染まりませんが、染まってしまうと色落ちしにくい特徴があります。
そして、何よりも耐久性が高いこと。
ウール繊維の「縮れ」は衝撃を和らげ圧力を分散させることに加え、伸縮性・弾力性に富んでいるので折り曲げたり引っ張たりしても回復し、その強さは乾燥時であれば良質な羊毛は同じ太さの鋼線、金線に等しいと言われるほどです。
また、ウールには悪臭などを吸収・分解させる消臭機能があることが最近の研究で明らかになりました。

ウールとシルクの長所・短所を教えてください
耐久性が高いウール絨毯

よいことずくめのように思えるウールにも短所はあります。
ウールの短所は、まず黄褐変してしまうこと。
ウールは動物性繊維でタンパク質でできているため、紫外線に当たると黄褐変してしまいます。
しかし、これがアンティーク・オールド絨毯の魅力になる訳ですから、見方によっては短所と言えないかもしれません。
次にカビが生える可能性があること。
繊維が水分を吸収するため、カビの原因となる菌類を寄せ付けやすくなります。
更に水に濡れると重くなること。
ウール絨毯の中でもとりわけ毛足の長いものは、キャレギほどの大きさになると水に濡れれば100キロを超えることさえあります。
そして、虫に食われやすいこと。
とくに納戸など、暗くて湿気がたまりやすい場所に保管する際には注意が必要です。

ウールとシルクの長所・短所を教えてください
虫食い

一方、シルクはウール同様に保温性・保湿性に優れ静電気が起こりにくいことに加え、光沢があり肌触りがよく、さらに引っ張る力に対しては羊毛や綿よりも丈夫。
緻密な織りの高級絨毯の縦糸にシルクが使われることが多いのはこのためです。
ただし、耐摩耗性(摩耗強度)については他の繊維よりも劣ります。
つまり「摩擦に弱い」ということ。
絹糸(けんし)は蚕の繭から採取した繭糸を撚り合せて作った生糸を、さらに何本か撚り合わせたものですが、絹糸の最小単位である繭糸がとても細いため、切れやすいからです。
また、酸・アルカリ(ペットの尿など)に弱く、シミができたりカビが生えやすい上、水に濡れると色泣きしやすいという短所があります。

ウールとシルクの長所・短所を教えてください
色泣き

加えて紫外線、水分、熱などによって繊維が酸化し、黄褐変や脆化しやすくなるとも言われています。
脆化というのは読んで字のごとく、繊維が脆くなることです。
脆化すると絨毯の縦横糸は切れやすくなり、パイルは粉末化(パウダリング)しやすくなります。
粉末化とは糸が粉状に砕けてしまうこと。
絨毯の表面を手で擦ったとき、指にパイルと同じ色の粉が付着するようであれば粉末化している証拠です。
シルク絨毯を長持ちさせるためには椅子を出し入れする場所や頻度に使用する場所を避け、直射日光、湿気、室温などに気をつけながら使う必要があります。

ウールとシルクの長所・短所を教えてください
粉末化(パウダリング)

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【ウールかシルクかの選び方】

シルク絨毯の方がウール絨毯よりも高級ですよね?

絨毯を製作するために必要となる経費には糸代の他、デザイン料、織り子の賃金、シャーリングや洗いに要する代金などがあります。
それらの経費のうち、全体の8割以上を占めるのが織り子の賃金です。
確かにシルク糸はウール糸よりも高価ですが、織り子の賃金に比べると糸代など、たかが知れたもの。
つまり絨毯の価格は、どれだけ手間がかかっているかによって決まるということです。
シルクが高級素材であるのは確かですが、必ずしもシルク絨毯がウール絨毯よりも高級ということにはなりません。

シルク絨毯の方がウール絨毯よりも高級ですよね?
20世紀最高の絨毯工房、アモグリ工房の作品(ウール)

ちなみに、ペルシャ絨毯にせよトルコ絨毯にせよ、生産量の9割以上はウール絨毯です。
これはシルク絨毯が高級だからではなく、ただ単に需要がないというのが理由。
シルク絨毯が人気なのは室内で靴を脱ぐ習慣のある日本や中東の国々などに限ったことで、土足のまま生活する欧米では、丈夫で長持ちするウール絨毯の人気が圧倒的に高いのです。

シルク絨毯の方がウール絨毯よりも高級ですよね?
アハディアン工房作、169万ノットのウール絨毯

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【ウールかシルクかの選び方】

「コルク・ウール」というのは何ですか?

世界には主なものだけでも200種類以上の羊がいると言われていますが、イランの羊は「ユリアル」とよばれる野生種から派生した羊です。
大きく垂れ下がった臀部と長い直毛を持つのが特徴。
この羊はさらにいくつかの種類に分けられるのですが、ウールがもっとも良質とされるのは北東部土着の「ホラサニ種」、次いで中西部の「ケルマ2種」です。


ユリアル

一頭の羊の中で一番柔らかいのは肩の毛で、二番目が脇の毛。
そうした柔らかなウールを総称したものがコルク・ウールです。
しかし、現在ペルシャ絨毯に使用されているコルク・ウールの多くは実はニュージーランドやオーストラリアから輸入されたドライスデール種などの羊のウール。
ドライスデール種はニュージーランドのマッセー農業カレッジ(現在のマッセー大学)教授であったF・W・ドライ博士が、高級絨毯用に英国原産のロムニー種を改良して作り出した羊の品種です。
直毛で混じりけのない白いウールが特徴で、1950年に新品種に認定されました。
ドライスデールの名はドライ博士に由来したものです。

ドライスデール種の羊
ドライスデール

輸入品を使う理由の第一は、イラン産のコルク・ウールは一頭の羊から少ししか採取できないため、高価になってしまうから。
第二は、イランで紡績した毛糸には植物片やビニール片などの不純物が混ざることが多いからです。
パイル糸に輸入品を使用することは最近になって始められたことではなく、19世紀末から第二次世界大戦の頃まで製作されていたカシャン産には、英国マンチェスター産のメリノ・ウールを用いた「マンチェスター・カシャン」とよばれるものがあります。
なお、よく耳にする「子羊の毛」という説明は完全な誤りとは言えないものの、事実を正確に伝えるものではありません。


マンチェスター・カシャーン

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【最高級のペルシャ絨毯の一例】

トルコ絨毯はペルシャ絨毯よりも丈夫だと聞いたのですが……

これはトルコの絨毯商がよく口にする言葉ですが、彼らが「ダブル・ノット」というのはペルシャ絨毯ではルール・バフトといわれる縦糸が上下に重なる構造のことではなく、「トルコ結び」のことです。
ルール・バフトの絨毯は縦糸が重ならないタフト・バフトの絨毯よりも丈夫ですが、トルコ結びがペルシャ結びよりも丈夫だということはありません。
イランやトルコをはじめとする中央アジアの国々で用いられるのはトルコ結びかペルシャ結び。
トルコ結びはトルコやコーカサス、イラン北西部で用いられ、「ギョルデス結び」ともいわれます。
本の縦糸に左右対称にパイルを絡める結び方で、鉤針を使用して速く結べます。

トルコ結び
トルコ結び

一方、ペルシャ結びは北西部を除くイラン全土(一部例外もあり)、アフガニスタン、パキスタン、インドなどで用いられます。
ペルシャ結びは「セネ結び」ともいわれますが、セネ(現在のサナンダジ)産の絨毯はトルコ結びで製作されています。
ペルシャ結びは左右非対称となることから鉤針を使うことができません。
しかし、指先の力が直接伝わるため、パイルはしっかりと固定され外れにくくなります。
ちなみにイランでは同じ絨毯を片やトルコ結び、片やペルシャ結びで製作した場合、ペルシャ結びのものの方が値段が高くなります。

ペルシャ結び
ペルシャ結び

ダブル・ノットとシングルノットの違いは何ですか?

「ダブル・ノット」とは縦糸が上下に重なる、イランでは「ルール・バフト」と呼ばれる構造のこと。
縦糸が重なることにより厚くなり強度が増します。
都市部で製作される絨毯はほとんどがダブル・ノットです。

   
ダブル・ノット(ルール・バフト)

一方「シングル・ノット」というのは縦糸が重ならない、イランでは「タフト・バフト」と呼ばれる構造のことです。
絨毯は薄い作りとなりますが、強度はダブル・ノットのものに劣ります。
トルクメンs産や古いセネ産などがこの構造。
注意しなければならないのはシングル・ノットにおけるノット数の数え方です。
縦糸2本につき1ノットですから、縦糸が重ならないシングル・ノットの場合、縦糸の数の半分がノット数になります。

 
シングル・ノット(タフト・バフト)

ダブル・ノットとシングル・ノットとの間に位置する「セミ・ダブル・ノット」もあります。
こちらはイランでは「ニム・ルール・バフト」と呼ばれる、縦糸が半分重なる構造。
農村部で製作される絨毯やトライバルラグに見ることができます。

  
セミ・ダブル・ノット(ニム・ルール・バフト)

「ヘレケ」はペルシャ絨毯ですか?

緻密な織りやデザインはペルシャ絨毯に似ているものの、ヘレケはトルコ国内で製作された絨毯、つまりはトルコ絨毯ですから、ペルシャ絨毯ではありません。
ヘレケ絨毯については詳細な説明を見ることがあまりないようなので、この場で解説しておきます。

アブドゥルハミド2世(在位1876~1909年)
アブドゥルハミド2世(在位1876~1909年)

ヘレケ絨毯の歴史は1890年、オスマン朝第34代皇帝アブドゥルハミド2世の命により、イスタンブール東方のヘレケ村に絨毯工房が開設されたことにはじまります(宮廷直轄の織物工房の開設は1843年。その後、火事で焼失し1890年に再建)。
トプカプ宮殿に代わり新しく建設されたドルマバフチェ宮殿用の絨毯を製作させるため、トルコ全土から優秀な織子が集められました。
西洋風の宮殿に合うよう、伝統的な幾何学文様のトルコ絨毯とは異なる流麗な花葉文様のデザインを採用。
こうしてヘレケ村でペルシャ様式の優美なシルク絨毯が誕生します。
その後、同村とイスタンブール市内のクムカプに開設された宮廷工房で製作されるようになったシルク絨毯は、皇帝からの御下賜品として使われるようになったほか、一部のイスタンブールの絨毯商にも取扱うことが許されるようになりました。
その陰にはイランのタブリーズの絨毯作家、ホセイン・ターヘルザデ・ベヘザードの活躍があったと伝えられます。

ドルモバフチェ宮殿のヘレケ絨毯
ドルモバフチェ宮殿のヘレケ絨毯

1922年にトルコ革命が勃発。
翌年トルコ共和国が成立すると、ヘレケとクムカプの宮廷工房は共和国営となり、さらに40年代に入るとヘレケの工房は民営化、クムカプの工房は閉鎖されるに至ります。
オザベック、デリーン、シュメール、ハンなどの企業がヘレケの工房を引継ぎ、第二次世界大戦後にはウール絨毯の製作も始まります。
しかし、のちにオザベック、デリーン、シュメール工房は廃業し、大手として現在も製作を続けているのはハン工房だけになってしまいました。

ヘレケ産とクムカプ産 
ヘレケ産とクムカプ産

ハン工房(屋号はハン・ハリ)は、オスマン朝末期に開設された宮廷工房で監督を務めていたヴェイス・アーにより設立された絨毯工房。
設立はトルコ革命後の1923年と言われており、宮廷工房の流れを汲む唯一の工房として知られています。
代々アー一族によって営まれ、現在はヴァイスの孫たちが運営にあたっています。
ヘレケ絨毯協会の代表を務めるエルハン・アーが生産部門、ヌルハン・アーは財務部門、そしてセルハン・アーが販売部門を担当。
セルハンが統括するイスタンブールの直営店は、観光の中心であるスルタンアフメット地区から遠く離れたアジア・サイドのバーダット通りにあります。


ハン・ハリ(イスタンブール支店)

シルク絨毯については1平方センチメートル中の結び目の数が81(9×9)個以上あることが条件ですが、ペルシャ絨毯に対抗する手段として織りの緻密さを追求したヘレケ・シルクには、1平方センチメートルに1,024(32×32)個の結び目を持つものまで存在しています。
ヘレケ・ウールについては1平方センチメートル中36(6×6)〜49(7×7)個前後が一般的。
ただし、同じクオリティで他産地にて製作されたものもあります。

32×32のヘレケ絨毯
32×32のヘレケ絨毯

かつてトルコ政府は国内の絨毯産業を保護するため、海外からの手織絨毯の輸入を禁止していました。
ところがその規制が撤廃されると、トルコより人件費の安いイランに製作を依頼する絨毯商が現れます。
その後、イランの経済成長に伴う物価高騰を受け、シフトした仕入先が中国でした。
いまではトルコで販売されているシルク絨毯のうち、前述したハン工房などで製作されたものを除く多くが中国からの輸入品になったと言われています。

中国で製作されているヘレケ絨毯のコピー品
中国で製作されているヘレケ絨毯のコピー品

なお、トルコへ旅行した日本人の中にはイスタンブールやカッパドキアの現地ガイドが説明する「10歳代の少女が何年もかけて織っている。あまりに細かい作業なので織りあがったときには目が見えなくなっている。だから一生のうち一枚しか織れない」などというお伽話を本気で信じている人がいます。
「私はトルコで現地の人から聞いたのだから間違いない!」とムキになって肯定する人さえいるのですが、こうした類の話はトルコの絨毯屋の完全な作り話。
もし事実であれば、国連なり人権団体なりが黙っているはずがありません。

ヘレケ絨毯の製作風景
ヘレケ絨毯の製作風景

工房のサインが入っていれば良質な絨毯でしょうか?

現代のペルシャ絨毯について言えば、銘の有無と品質の良し悪しとは全く関係ありません。
もともと絨毯の銘は特別な注文を受けた際、注文者の名や年号などとともに織り込まれたもので、作者自身の名をアピールするためのものではありませんでした。


「アルデビル絨毯」に織り込まれたマクスド・カシャーニの銘

19世紀の後半、欧米における絨毯ブームを背景として工房が続々と開設されるにつれ、差別化の方策として自らの名を入れる工房が現れはじめます。
しかし、それは作品が外交用の贈答品として使用される帝室御用達の工房など、ごく一部に限られていました。

絨毯にやたらと銘が入れらるようになったのは1990年頃からのことで、これはわが国におけるバブル景気の到来と時を同じくしています。
しかもこの現象はシルク絨毯を多く産出するクムで起こっていることから、当時、有名作家の美術品やヨーロッパの高級ブランド品を買い漁っていた日本人の影響が少なからずあったことは確実でしょう。

アモグリ工房の銘
アモグリ工房の銘

最近では、無銘の作品や他産地のコピー品に有名工房の銘を後付けすることが横行しています。
とくにナインのハビビアン工房の作品については、日本国内で流通しているほとんどが偽物と言ってもよいほどですので、購入に際しては注意が必要です。

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【工房のサインについて】

ギャッベもペルシャ絨毯なのでしょうか?

ペルシャ絨毯とは「イラン国内で製作された手織絨毯」をいいます。
したがって、ギャッベもペルシャ絨毯には違いありません。
ただし、現代のギャッベは商業ベースに乗って製作されているもので、長きにわたって受け継がれてきた伝統的なギャッベとはかなり趣きを異にします。

本来、ギャッベは簡素なデザインながらも、ペルシャ絨毯のイメージからかけ離れたものではありませんでした。
1970年代になってから、それまでイランでは見向きもされなかったギャッベに注目する外国人が現れはじめます。
ライオンなどを織り出したそのユニークなデザインが新鮮に感じられたのでしょう。
そして1980年代に入ると、ギャッベは彼らの好みに合わせた姿に大きく変貌を遂げてゆきました。
デザインはよりシンプルに、パイルはより長くなってゆきます。

1932/33年の年号が織り込まれたギャッベ
1932/33年の年号が織り込まれたギャッベ

そのきっかけを作ったのが、シラーズの絨毯商ゴラムレザー・ゾランバリ氏です。
草木染めを復活させ、遊牧民の実用品過ぎなかったギャッベを「商品」として国外に広めた彼の功績は大いに評価されるべきでしょう。
しかしその一方で、商売のために彼らが代々継承してきた伝統を大きく歪めてしまったこともまた事実です。

現在、カシュガイ族やルリ族は現金収入になる現代ギャッベの製作に熱中するあまり、かつて遊牧民の絨毯としては高い品質を誇っていたメインラグさえも作らなくなってしまいました。
実に悲しむべきことですが、アメリカン・サルーク(「上級編」を参照)の前例もありますから、これも時代の流れとして受け入れるしかないのかもしれません。

空前のギャッベ・ブームに沸く昨今です。
それを受け、本来、遊牧民たちの実用品に過ぎないギャッベを、あたかも「芸術品」のごとくに装い法外な価格で販売する業者が後を絶ちません。
そもそもギャッベとは、粗悪な絨毯を表す名称であることだけは理解しておくべきでしょう。

1943/44年の年号が織り込まれたギャッベ
1943/44年の年号が織り込まれたギャッベ

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【ギャッベは芸術品か?】

ネットオークションに出品されているペルシャ絨毯は本物ですか?

もちろん本物も出品されてはいるのですが、有名工房の作品の偽物や他産地で製作されたコピー品の他、ペルシャ絨毯ではないものがペルシャ絨毯として多数出品されているのが現状です。
ペルシャ絨毯でないものとしてはダブル・ノットのパキスタン絨毯やインド絨毯、カシミール・シルクや「高段数」とよばれる中国絨毯などがありますが、出品者がペルシャ絨毯の専門業者でない場合、彼ら自身が本物と思い込んでいることも少なくないようです。

ダブル・ノットのパキスタン絨毯
ダブル・ノットのパキスタン絨毯

誰もが出品できるネットオークションゆえ、それはそれで仕方ないことなのですが、問題なのは明らかに専門業者とおぼしき一部の出品者たちが嘘を並べた商品説明で、詐欺まがいの行為をしていることでしょう。
その実情は目を覆うばかりで、「◯◯工房作」と書かれていてもそのほとんどは銘が後付けされた偽物。
クム産やナイン産、カシャン産のコピー品も多く、それらは「最高級ペルシャ絨毯」「工房直接買付」「本物保証」などとタイトルされて出品されております。
説明文には「世界に1枚」「時価◯百万円」「100年以上使えます」などと根拠のない文言が登場し、専門知識に乏しい入札者を引っかけようとしていることは明らかです。

インド絨毯
インド絨毯

『開運!なんでも鑑定団』でおなじみの中島誠之助氏は著書の中で、偽物を掴まされる条件として「これを買ったら儲かると思ったとき」というのをあげています。
悪徳業者は購入者の欲に巧みにつけ込んできます。
たとえば、即決価格が500万円の商品を50万円で落札したとしましょう。
常識的に考えてみてください。
即決価格、すなわち定価が500万円の商品を50万円で売る業者がいるでしょうか?
もしいるとすれば、何か裏があることは明らかです。

カシミール絨毯
カシミール絨毯

落札相場を調べれば、出品する商品がいくらほどで落札されるかは大方見当がつきます。
業者ならば、その価格で利益をとれるものしか出品しないでしょうし、高額になればなるほど入札件数も少なくなることはわかっています。
つまり、即決価格の500万円というのはあり得もしない出鱈目な価格。
落札者自身が思うほど得をした訳ではないのです。
ネットオークションで「掘出し物」を見つけることは、プロでなければ困難です。
入札するなら損得にとらわれず、出品物を気に入るかどうかを判断基準にしていただければと思います。

中国絨毯
中国絨毯

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【ペルシャ絨毯の定義】

御社ではどれくらい値引してくれるのでしょうか?

聞くたびに悲しくなる言葉があります。
それは「絨毯など値段があってないようなもの」。
まず申しあげたいのは、半額に値引きした後の価格が本当に安いかどうかということ。
法外な定価を設定しておき、極端な値引きによって購買意欲を煽るという商法が絨毯業界では当たり前になっているからです。
90パーセント引きで販売したという話さえ耳にしました。
これは「交渉によって価格が決まる」という中東式の商法に倣ったもの。
あとになってから「騙された」とか「高く買わされた」とぼやく方がいらっしゃいますが、このルールに則れば、買った側はその商品に対して「支払った分だけの価値を認めた」ということになり、売った側は「騙した」「高く買わせた」という罪の意識を持つ必要はないのです。

ペルシャ絨毯国際展示会にて
ペルシャ絨毯国際展示会にて

外国人経営者の多い業界だからなのでしょうが、この方式を商習慣の異なる日本国内に持ち込んでいることが業界がいまひとつ信用されない最大の要因だと私たちは考えております。
手織絨毯は季節ものの衣料品でもなければ生鮮食料品でもありません。
半額で叩き売らなければ買手がつかないようなものが、はたして本当に良い商品といえるでしょうか?
完成されつくしたものは時代を超えて普遍であるはず。
当社では「どこより価値ある品を、どこよりもお求めやすく、どこよりも真心を込めて」をモットーに最大限の企業努力をしています。
よって大変申し訳ございませんが、お値引には対応できません。
以上、なにとぞご理解いただけますようお願い申しあげます。

テヘランの絨毯バザールにて
テヘランの絨毯バザールにて

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【ペルシャ絨毯の値段について】

ペルシャ絨毯やトライバルラグに関するおすすめの本はありますか?

国内外で出版されたペルシャ絨毯・トライバルラグの本のうち、おすすめしたい何冊かをご紹介します。

『ペルシア絨毯図鑑』
『ペルシア絨毯図鑑』
編者:手織絨毯協会
出版社:アートダイジェスト
出版年:1986年
ISBN:4900455024
アンティーク・オールドを中心にペルシャ絨毯の名品91点をカラー写真と詳細な説明文で紹介しています。
エイミ岡田氏による「絨毯ジャパネスク」と題したインテリアコーディネート例、国立民族学博物館名誉教授の杉村棟氏によるシルクロードの手織絨毯の概説。その他、ペルシャ絨毯の基礎知識から地名/部族名、デザイン、絨毯の古典、技術、イスラムの王朝、人物名/その他についての解説もあり、入門編として最適な一冊。
すでに絶版となっていますが、中古本ならAmazonなどで入手可能(2018年9月現在)ですので、入手可能なうちにご一読をおすすめします。

『ペルシャ絨毯文様事典』

『ペルシャ絨毯文様事典』
編著者:三杉隆敏・佐々木聖
出版社:柏書房
出版年:1998年
ISBN:4760116516
アンティーク・オールドのペルシャ絨毯の名品155点を詳細なカラー写真で紹介した豪華な一冊です。
作品はメダリオン・コーナー・タイプ、メダリオン・タイプ、オーバーオール・タイプ、メヘラブ・タイプ、ピクチュアー・タイプの5つに分類されており、特徴的な箇所については拡大写真を掲載。
とても見やすく構成されています。
巻末にはペルシャ絨毯の文様や文化についての記述もあり。
著者は陶磁器学者の三杉隆敏氏と現(株)光和代表取締役の佐々木聖氏で、1990年にハードカバー版が、1998年にソフトカバー版が出版されました。
すでに絶版となっていますがAmazonなどで中古本の入手が可能です(2018年9月現在)。

『カーペットストーリー・ペルシア編』

『カーペットストーリー・ペルシア編』
著者:エッシー・サカイ(横張和子訳)
出版社:千毯館
出版年:1993年
ISBN:4915790169
英書『The Story of Carpets』の和訳本です。
アンティーク・オールド絨毯を中心に157点のペルシャ絨毯(ペルシャ以外の絨毯も一部あり)をオールカラーで紹介。
「はじめに」「遥かな僻の地において」「秘密を解き明かす」「模様を読む」「絨毯を演出する」「真実を語る」「語られざる富」「地域別」の8部構成です。
本書もすでに絶版になっているようですがAmazonなどで入手可能(2018年9月現在)。

『ORIENTAL CARPET DESIGN』

『ORIENTAL CARPET DESIGN』(英語)
著者:P. R. J. Ford
出版社:Thomas & Hudson
出版年:1992年
ISBN:0500276641
オリエンタルラグ関連書籍のベストセラーです。
ペルシャ絨毯を中心に、トルコ、アフガニスタン、インド、中国の絨毯を大量のカラー写真(一部はモノクロ写真)を用いて紹介。
マイナー産地についても詳細に説明されており、オリエンタルラグの概要はこの一冊で知ることができます。

『The Illustrated Buyer’s Guide to Oriental Carpets』

『The Illustrated Buyer’s Guide to Oriental Carpets』(英語)
著者:J. R. Azizolahoff
出版社:Schiffer Pub Ltd
出版年:2002年
ISBN:0764314874
長年オリエンタルラグの取引に関わってきた著者が、イラン、トルコ、インド、中国の手織絨毯を中心に(機械織絨毯も一部あり)、アンティークから現代物まで370点以上のカラー写真を用いて紹介した一冊です。
価格が併記されているので、海外におけるオリエンタルラグの相場を知るにも最適。
ただし、ペルシャ絨毯については出版当時の米国とイランとの関係上、アンティーク・オールドの掲載があるのみです。

『Tribal Rugs』

『Tribal Rugs』(英語)
著者:James Opie
出版社:Laurence King Publishing
出版年:1998年
ISBN:185669125X
トライバルラグの収集家・研究家として世界的に知られるジェームズ・オピー氏が著した一冊。
イラン、トルコ、トルクメニスタン、アフガニスタンの貴重なアンティーク・トライバルラグの逸品がオールカラーで紹介されています。

『TRIBAL RUGS』

『TRIBAL RUGS』(英語)
著者:Brain W. Macdonald
出版社:Acc Pub Group
出版年:2017年
ISBN:1851498567
ジェームズ・オピー氏と双璧をなす、トライバルラグ収集家・研究家のブレイン・マクドナルド氏渾身の一冊。
イラン、トルクメニスタン、アフガニスタンの部族民と、彼らが製作するトライバルラグについて詳細に解説されています。

イランで作られたコピー品があるそうですが?

まず、圧倒的に多いのが、クム産のシルク絨毯を真似て作ったザンジャン産やマラゲ産のもの。
クムで使用されていた古い下絵を用いているため、現行のクム産ほどデザインは複雑でありません。
廉価なコピー品ですから当然、品質は落ちますが、中には横糸にシルクを用いて製作されたものもあり、横糸に綿糸を使用した本物のクム・シルクよりもしなやかさだけは勝るので要注意です。
銘が付されているものがほとんどですが、ザンジャンやマラゲに工房はなく、これらの銘はクムの有名工房の名を後から付け加えたものです。

ザンジャン産
ザンジャン産

こうしたコピー品はすべてイラン北西部ならではのトルコ結びで製作されているため、ペルシャ結びで製作されたクム・シルクとは判別が容易でした。
しかし最近のクムでは人件費を抑えるため、製作期間を短縮できるトルコ結びを用いる工房が増えているので厄介です。
クム・シルクのコピー品にはカシャンの銘を入れたもの(とくに多いのが、俗に「ホワイト・カシャン」とよばれるフィールドの地色が白いもの)も存在しますが、本物のカシャン・シルクはペルシャ結びで製作されているため、結びを見れば判別可能です。
尚、マラゲ産のパイルには絹糸ではなく「絹紡糸」が使用されていると言われています。
絹紡糸はスパン・シルク、あるいはクズ・シルクとも呼ばれ、生糸を作る際にできた切れ端や生糸を取り終わった後の残り繭、品質の落ちる中級、下級繭などを綿(わた)状にして紡いだもの。
「絹100%」には違いありませんが、絹ならではの光沢が少なく肌触りもよくありません。

その分値段は安く、絹糸の半分以下で買えます。

 マラゲ産
クム産とマラゲ産

同じく市場に溢れているのがタバスやカシュマールで製作されたナイン産のコピー品。
1990年代からナインでは「ノーラー」とよばれる9本撚りの綿糸を縦糸に使用した絨毯は製作されていないので、昔の在庫品以外はすべてコピー品です。
ナイン産のノーラーには柄糸の一部にシルクが使用されていましたが、コピー品には綿糸が使用されたものもあります。
ただし「一部絹」と説明する場合がほとんどですから、注意が必要です。
これらのコピー品のパイルはやや長く、1cmほど。
本物のノーラーはパイルが短く刈り込まれており5mm程度しかありません。
加えてタバスでは、「シシラー」とよばれる6本撚りの綿糸を縦糸に使用したナイン産のコピー品も製作されています。
こちらには柄糸の一部に綿だけでなく、ナイン産と同様にシルクを使用したものもあります。

 
ナイン産とタバス産

タブリーズ産のコピー品としては「マヒ」とよばれるヘラティ文様の絨毯がホイで製作されています。
現在50ラッジ以下のマヒ柄の絨毯はタブリーズでは製作されておらず、現在流通しているもののほとんどはホイ産です。

 
タブリーズ産とホイ産

また、「ナグシェ」とよばれる花柄の絨毯のコピー品がカシュマールで製作されています。
何れも本物のタブリーズ産と比べるとややパイルが長いのが特徴です。
他には、カシャン産を模して製作されたアルダカン産やヤズド産。クム・ウールを模したシャーレザー(ゴムシェ)産などがあります。

 
カシャーン産とアルデカン産

これらはコピー品ではないのですが、ザンジャン産のウール絨毯(クム・シルクのコピー品とは全く異なる本来のザンジャン産です)を人気のビジャー産と表記したり、ごくありふれたケルマン産やビルジャンド産を、同じ地域の高級品であるラバー産やムード産として販売しているケースもよく見られますので気をつけてください。

ビジャー産 ザンジャン産
ビジャー産とザンジャン産

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【ランクについて】

イラン人から買ったペルシャ絨毯が偽物だと言われました

島国に生まれ育ち、外国人馴れしていない日本人は、無条件に外国人を信用してしまいがちだといわれます。
海外において詐欺や盗難などの軽犯罪に巻き込まれる日本人旅行者が多いのは、その証左といえるでしょう。

すべての日本人が着物や刀に詳しいわけではないのに同じく、すべてのイラン人がペルシャ絨毯に詳しい訳ではありません。
実はわが国でペルシャ絨毯の販売に携わっているイラン人のうち、イランの絨毯バザールで修行を積んだ筋金入りのプロは数えるほどしかおらず、大半は来日後まったく違う職業から転向した人たちが現実。
もちろん真面目で勉強熱心な方もおられますが、「絨毯で一儲けしよう」といった安易な発想で転向した者もいて、そうした者たちは絨毯についての知識もそれなりで勉強もしていませんから、騙す意図があったかどうかはともかく、偽物を販売することはあり得ます。
日本人業者でも怪しい商品を取扱っているところは多いので、日本人だから安全ということでもありません。

日本人にせよイラン人にせよ人間の本質は同じですから、まずは何度かお店に通い、それが無理なら電話やメールでやり取りするなどして、人間性と絨毯についての造詣の深さを見極めた上で購入の決断を下されるのがよいと思います。


セーラフィアン工房のFacebookページで紹介されている偽のセーラフィアン作品

ペルシャ結びとトルコ結びはどうやって見分けるのでしょうか?

パイル面を上にして絨毯を横方向に山折りにしてください。
パイルの根元に結び目が現れるはずです。
この結び目が隙間なく並んでいればトルコ結び、結び目と結び目の間からパイルが出ていればペルシャ結びです。

トルコ結び トルコ結び
トルコ結び

ペルシャ結び ペルシャ結び
ペルシャ結び

ナインのハビビアン工房の作品には偽物が多いと聞いたのですが?

本物と偽物とではデザインや色などにも相違があるのですが、それらから判断するのはプロでなければ難しいと思われますので、比較的簡単な見分け方をお教えします。

 ハビビアンの偽サインが後付けされたナイン絨毯
ハビビアンの偽サインが後付けされたナイン絨毯

銘をよく見てください。
銘に使用されている色が、銘の周囲と微妙に違っていないでしょうか?
もし違っているならば後付け、つまり偽物である可能性が高いといえます。
また、裏側から見たときに銘の部分だけ結びが乱れていたり、表側から触ると、そこだけ盛りあがっていたり凹んでいたりした場合も同様です。

 「カシャーン・エラミ」の銘が後付けされたマラゲ産
「カシャーン・エラミ」の銘が後付けされたマラゲ産

クム産やカシャーン産(シルク)イスファハン産では、銘がある余白部分に窮屈さが感じられる場合も後付けの可能性があります。
なお、ハビビアン工房では「ノーラー」とよばれる9本撚りの綿糸を縦糸に使用した絨毯は製作されておりません。
ハビビアン工房作のノーラーは、そのすべてが偽物です。

ナインのハビビアン工房の作品には偽物が多いと聞いたのですが?
ノーラーに後付けされた偽のハビビアンの銘

※関連記事:ペルシャ絨毯の偽物の見分け方【偽の工房サインの見分け方】

天然染料と化学染料の見分け方はありますか?

発色やアブラシュの現れ方で見分けますが、色がどぎつい昔のアニリン染料やアゾ染料と違い、現在主流となっているクローム染料の中には天然染料との見分けがつきにくい色もあり、判別は難しいのが実際。
天然染料と化学染料が併用されていることも多く、こればかりは経験を積んで目を肥やすしかありません。
誤解してほしくないのは、必ずしも天然染料が化学染料に勝る訳ではないということ。
化学染料の中でもクローム染料は直接染料であるアニリン染料やアゾ染料とは異なり、天然染料の多くと同じ媒染染料です。
分子内の酸性基が媒染剤に含まれるクロームなどと錯体を作ることにより繊維と強く結合するため、褪色しにいのが特徴。
さらに色数も豊富で、とても優れた染料なのです。
化学染料は科学の進歩という時代の流れの中で登場したもの。
質の劣るアニリン染料やアゾ染料は論外ですが、良質なクローム染料をいたずらに蔑むのはいかがなものでしょうか。
現代の手織絨毯に使われている糸は機械で紡いだ糸が大半ですので、クローム染料を否定するなら機械紡ぎの糸をも否定しなければならないでしょう。
そうなれば選択肢は限りなく狭められてしまいます。
蔑まれるべきは、クローム染料が使用されている絨毯を草木染と偽わって販売する者の卑しさであって、クローム染料の存在そのものではないはずです。

 
天然染料が使用されたセネ産とクローム染料が使用されたセネ産

新しい絨毯を古く見せる方法があると聞いたのですが?

新しい絨毯を古く見せるにはいくつかの方法があります。
古くから行われているのは絨毯を道路上に敷き、人や車に踏ませる方法。
しかし、これには時間がかかるため、近年もっぱら行われているのが腐食性のある苛性ソーダを用い、人工的に絨毯の表面を劣化させる「ケミカル ・ウォッシュ」という方法です。

ケミカル ・ウォッシュは「ヨーロピアン・ウォッシュ」ともよばれ、アンティーク好きのヨーロッパ人の趣向に合わせて開発されたもの。
絨毯は全体的に黄味を帯び、色はやや褪せてそれらしい雰囲気にはなります。
しかし、ケミカル ・ウォッシュが施された絨毯の色は、自然に出てくる古色とは異なる不自然さがあります。

自然に褪色したパイルとケミカル・ウォッシュされたパイル
自然に褪色したパイルとケミカル・ウォッシュされたパイル

自然に褪色した絨毯のパイルは根元に向かい徐々に色が濃くなりますが、ケミカル ・ウォッシュが施された絨毯のパイルの色は上の部分だけが薄くなります。
苛性ソーダは劇物に指定されている危険な薬品ですので、間違ってもご自身でケミカル・ウォッシュを試したりしないでください。

最近ではサフランや胡桃を使って染色する方法も行われています。
サフランを使用した場合、絨毯は黄味を、胡桃を使用した場合は茶味を帯びますが、自然が醸し出す古色とは異なります。


サフラン・ウォッシュが施されたグーチャン・シルク

ペルシャ絨毯を自分で洗ったら色が滲んでしまいました……

テレビ番組で絨毯を洗っている場面をご覧になり、同じようにされる方が結構いらっしゃるのですが、絶対にやめてください。
色物を白物と一緒に洗濯すれば色が移りますが、これは色物に使用されている定着していない染料が流れ出るためです。
絨毯のパイルは毛もしくは絹を染色したものですから、素材や染料による程度の差こそあれ、洗えば必ず色落ちします。
絨毯は流水で洗うのが基本ですが、これは滲み出る染料を流し去るため。
「ペルシャ絨毯は色落ちしない」などという説明は嘘だと思ってください。


それでは、なぜイランでできることが日本でできないかといえば、イランと日本とでは「気候」が全く違うからです。
日差しが強く乾燥地帯であるイランでは、干した絨毯が乾くまで、さほど時間を要しません。
しかし、湿気の多い日本では、絨毯が乾燥するまでに時間がかかりすぎ、色が滲んでしまう可能性が高くなってしまうのです。
日本国内の手織絨毯メンテナンス業者は、現地から取り寄せた大きな脱水機を用いるなどして、この問題を解決しています。


イランにおける絨毯洗浄の様子

どうしたらペルシャ絨毯の目利きになれますか?

『開運!なんでも鑑定団』でお馴染みの中島誠之助氏によれば、目利きの骨董商は50人に1人だそうです。
曰く「目が利く人というのは、モノを見分け、モノの本質がわかる人をいいます。骨董を扱う人間がすべて目利きとは限らない。50人の骨董商がいればそのうちの1人、目が利くかどうかでしたねぇ。ええっと驚かれるかもしれませんが、これは骨董の世界に限らず、どんな世界でもいえることではないでしょうか。たとえば、料理人だって数多く存在すれども、真のプロフェッショナルな仕事をしている人というと、そんなに多くないというのと同じことなのです」(中島誠之助著『ニセモノ師たち』より)。

これは絨毯商についても当てはまることで、目利きの絨毯商はやはり50人に1人ぐらいではないかと思います。
目が利かない人たちというのは自分で良い品を見分ける力がないことをわかっていますから、辺りを見回して売れているものを仕入れようとする。
結果、同じような商品ばかりが溢れかえるようになります。
ギャッベ、クム・シルク、ナイン、タブリーズのマヒ柄……どこもかしこも同じような品ばかり。
当然、価格競争になってしまいますから利益がとれなくなります。そこで利益をあげるために、よからぬことを考える訳です。

どうしたらペルシャ絨毯の目利きになれますか?
良書ですので、ぜひご一読を!

目利きというのは一朝一夕になれるものではありません。
また「才能」が必要とされますから、誰もがなれるというものでもありません。
プロのスポーツ選手と同じと考えればわかりやすいでしょう。
それでは目利きになるための方法とは何でしょうか?
目利きになるための方法として中島氏は次のように説明しています。
「最初の出発点を高く設定することが、目筋を高めていく最良の方法だと思います。出発点を高くする唯一の方法は、感受性の豊かなうちに、予備知識をあまり持たずに、名品名作そして伝承のはっきりしたものを、いやというほど、そしてむさぼるように観ることです。これしかありません」(『ニセモノ師たち』より)。
つまり「若いうちに名品だけを見ろ」ということ。
昔の骨董屋の主人は丁稚たちに本物しか見せなかったと言います。
本物だけを見ていれば、目線は自ずと高い位置に固定されますから、そのレベルから下のものはわかるようになります。
つまり、教えなくとも偽物を見分けられるようなる訳です。

逆に偽物や駄物ばかりを見てきた人というのは本物や名品がわからない。
それは目線が低い位置に定められてしまうからです。
ひとたび目線が低い位置に定められてしまうと、そのレベルでしかものを見ることができません。
したがって、名品を見ても狭いキャパシティの内でしか判断できなくなる訳です。
そうなってしまうと、それを克服するのは非常に困難。
「三つ子の魂百まで」で、長年の癖がなかなか直らないのと同じことです。
中島氏の言うとおり、目利きになるためには若いうちにその訓練をしておかなければなりません。
ここで「自分はもうトシだから……」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
しかし諦めることはありません。
目利きにはなれなくとも、努力次第でそれに近づくことはできるのです。

どうしたらペルシャ絨毯の目利きになれますか?
クリスティーズにおける鑑定風景

※関連記事:ペルシャ絨毯の正しい選び方【掘出し物などないと心得る】

イランに行ってペルシャ絨毯を買おうと考えているのですが……

業者ではない方でもペルシャ絨毯についての知識が豊富で現地の相場にも詳しく、なおかつペルシャ語に堪能というのなら可能性がない訳ではありませんが、とても難しいと思います。
プロのバイヤー(イラン人バイヤーを含む)でさえ、バザール内の仲介者にコミッションを支払って買付けを行っているという現実を知っておいた方がよいでしょう。

テヘランの絨毯バザール
テヘランの絨毯バザール

テヘランのバザールを例にとると、通路は迷路のように入り組み、通路に接する「サライ」は地上3階から地下1階ほどあります。
同じようなサライがいくつも連なるので、慣れないうちは自分がどこにいるのかさえわからなくなるほど。
また、バザールの商人たちは外国人と見るや相場の何倍もの値をふっかけてくるので、価格交渉が不可欠となります。
相手は世界一手強いといわれるペルシャ商人です。価格交渉に慣れていない日本人にまず勝ち目はありません。

面倒な駆引きをしないで購入したいのなら、テヘランの中心部、フェルドーシー通りにあるイラン絨毯公社(ICC)本部・直営店に足を運ぶのも一考です。
バザールでうまく値切るよりは割高になりますし選択肢も限られますが、正札販売をしているのでイラン人と同じ価格で購入できます。

ICC本部・直営店
ICC本部・直営店

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